曲・演奏

Beethoven, ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品61

1806年、後に傑作の森と呼ばれる重要な時期にルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェンが短い期間で一気に描き上げたとされる名協奏曲。

彼がただ1曲だけ世に残したこのヴァイオリン協奏曲は、古今東西の同曲の中でも一際高く聳え立つ。常に革新を目指したベートーヴェンの斬新なアイデアも満載である。

[第一楽章]

なんとティンパニのソロで開始。冒頭、静かにゆったりとトン、トン、トン、トン、トンとリズムが刻まれると、木管楽器が豊かなテーマを歌い出す。幸福に満ちた穏やかな音楽が広大に流れていく。やがてヴァイオリンソロが加わるが、そのシーンもさりげない登場の仕方が逆にクール。随所に聴かれる心地よく柔らかなハーモニーに乗り、ソロが美しく奏で上がる長大な楽章だ。

[第二楽章]

息の長い旋律が連なる変奏曲。この音楽は深い愛情に溢れている。カデンツァを挟み、切れ目なく次の楽章に続く。

[第三楽章]

躍動するロンド。ソロとオーケストラは一体となり、小気味良く飛び跳ねる。シンプルな楽想から、溌剌としたベートーヴェンサウンドが見事に展開されていく。

(参考) 関西フィルハーモニー管弦楽団 パンフレット

ほんね
ほんね

クラシック上級者向けの案内文な気がします

ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770-1827)は、ドイツのボンで生まれオーストリアのウィーンで活躍した作曲家です。

注釈

  • 傑作の森
    Romain Rollandは、ベートーヴェンの中期の作品群を「傑作の森」と称しました。この中期には諸説あり、6年や10年などと言われています。
    この始まりは、1802年にベートーヴェンの弟宛てに書かれた「ハイリゲンシュタットの遺書」でした。
    この遺書に書かれた苦悩と葛藤を経て、ベートーヴェンは様々な名曲を作成していくのです。

たびたびこんな目に遭ったために私はほとんどまったく希望を喪った。
みずから自分の生命を絶つまでにはほんの少しのところであった。

――私を引き留めたものはただ「芸術」である。自分が使命を自覚している仕事を仕遂げないでこの世を見捨ててはならないように想われたのだ。

参考文献
ハイリゲンシュタットの遺書, VIE DE BEETHOVEN, Romain Rolland, 片山敏彦訳

はくたく
はくたく

1801年に、ベートーヴェンは友人に聴覚障害で悩んでいることを打ち明けざるを得ないくらい、耳の状況が悪くなっていたのであったよ。

ほんね
ほんね

遺書ではあるものの、自分の作曲の未来の方向性も示されています
諦めていない感じは伝わってきますね

  • Romain Rolland(1866-1944)
    フランスのノーベル文学賞を受賞した作家です。
    Romain Rollandは、1903年に「ベートーヴェンの生涯(Vie de Beethoven)」を執筆しました。なおこの本は、片山敏彦によって翻訳されています。
  • ただ1曲だけ
    ベートーヴェンは優れたピアニストでもありました。
    そのためなのか、ヴァイオリン協奏曲はこの「作品61」しか完成していないといわれています。
ほんね
ほんね

その割にはヴァイオリンのソロは、奏者の技巧が必要そう、と言いますか
難しそーうですよ
よく普段作っていないようなものも作れますね

はくたく
はくたく

ベートーヴェンは真面目な作曲をする人だったため、この作品61も
ヴァイオリン協奏曲の王者と言われるくらい王道のものですぞ。

  • ティンパニのソロ
    当時も今も、第一楽章がティンパニのソロから始まる曲は、とても珍しいようです。
ほんね
ほんね

このティンパニのトン、トン、トン、トンからはじまったら、とりあえずこの曲!
と言ってみるスタイルで生きていきます

  • 変奏曲
    変奏曲とは、主題とよばれる素材・テーマ・旋律をわかりやすく示し、その後主題を変化させた変奏を複数並べていくクラシック音楽の形式の一つのことです。
    変奏様式によって主題がどのように変化しているか、つまり変奏の変化の仕方を判別するには音楽理論の知識が不可欠だと言われています。
はくたく
はくたく

クラシック初心者にもハードルを下げるために、
「作曲家の変奏特徴を理解するための変奏曲可視化システム(村岡, 2014)なども
研究されておりますぞ。

  • カデンツァ
    カデンツァ(伊 cadenza)とは、独奏協奏曲にあって、独奏楽器がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏をする部分のことです。
ほんね
ほんね

この作品61では、ヴァイオリンのソロの一番大事なところがここだったのですね!!
しまった、気づかずに聞き流してしまいました

  • ロンド
    ロンドは、主要な主題と、一般に「エピソード」と呼ばれる1つまたは複数の対照的な主題が交互に現れる音楽形式のことです。
    パターンの例:ABACA , ABACAB , ABACBA , ABACABA
    他にも、”digressions” や “couplets”と呼ばれることがあります。
はくたく
はくたく

ベートーヴェンは、短めの主題に自分の思いを込めて、処理・展開するのが得意だったようじゃ

感想

ほんね
ほんね

ベートーヴェンが作曲した時、きっとこの曲が弾けるヴァイオリニストがいたからこそ書いたのだろう、と思うような曲でした
あとは、主題、同じフレーズがが繰り返されるので、初心者でも聞きやすい気がしました

はくたく
はくたく

つまり奏者は、クラシックをよく知る人が単調でつまらないと感じないように
音を作り上げていかなくてはならないわけですな。